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取り扱いは海外ドラマなどですが、実際の人物、原作者の方、団体等には一切関係がございません。 同性愛表現を含みますので、同人にご理解、ご興味のない方のご入場は固くお断りしております
11 . June
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01 . May
喧嘩した時のマクマナス兄弟のおはなし






いつものようにドクの店のカウンターのど真ん中を占領しているマーフィーの横に陣取ったロッコは、珍しく鬱々としているマーフィーの隣の席をちらりと見やった。
マーフィーの横、ロッコの座っている側ではないほうの席には、いつもコナーがいる。けれど今日は空の椅子だけだ。
来店早々にロッコがそれを指摘したが、マーフィーは口を尖らせて、あんな奴知らねぇよ、と可愛い顔をしただけだった。つまり喧嘩したということだ。
マクマナス兄弟はとても仲が良い。35歳にもなって同じ部屋で暮らし、同じ職場で働いているのだから当然ともいえる。けれど、喧嘩するほど仲が良い、なんて諺にもあるように喧嘩の絶えない二人でもあった。彼らの喧嘩の原因なんて誰の目にも明らかなほどくだらないことばかりだったが。(例えばその日どちらが先に、おはよう、と挨拶したかなど)
今回もまた大したことではないのだろうとロッコは考えた。兄弟と知り合ったばかりの頃は、ロッコもこんな風に一人で拗ねるマーフィーを心配してやったりもしたが、今ではそれがいかに阿呆らしいことか身に沁みてわかっている。
それでもロッコは、どうかしたか、と声をかけてやった。隣に座ってしまった以上、そうしなければマーフィーが怒って暴れ出すことを知っていたからだ。
 
「コナーが悪いんだ」
 
短い言葉とともに、マーフィーはカウンターへ額をぶつけた。ロッコはすぐに顔色を変え、マーフィーの額に傷がついていないことを確認した。彼の可愛い顔にほんの少しでも傷があればコナーに締め上げられるとロッコは思ったのだった。
コナーは豪気な男だが、マーフィーのこととなると途端に心の狭い理不尽極まりない男に変貌する。コナーはこの上なく弟を溺愛しているのだ。きっとマーフィーのためならコナーは己の自尊心も道徳も呆気なく捨ててしまえるに違いない、そうロッコは思う。そして恐らく、それはマーフィーも同じだ。
 
「そうだ、コナーがぜんぶ悪い」
 
もう一度マーフィーはカウンターへ額をぶつける。もうよしてくれ、とロッコは叫びそうになった。
マーフィーは聡明で、楽観的で、少しばかりのんびりしている。人見知りもせず、知らない奴が話しかけてきても、特有の可愛らしい声でお喋りを始めてしまう。
けれど、そんな彼はコナーのことになると兄と全く同じように、我儘で身勝手な弟になる。弟の顔をしている時のマーフィーは、世界の中心をコナーに定めてしまっていて、しかもそのコナーは自分の為に生きていると信じていた。だから商売女に声をかけられたり、ドクの店で知り合った奴と仲よくしていたり、兎に角マーフィー以外の人間がコナーに近づくのを嫌がった。いや、嫌がったなどという表現は甘い。マーフィーは自分からコナーを奪おうとする存在を憎んでいた。コナーがまったくそんな気もないと理解しているにも関わらず、自分とコナーの間には1ミクロンほどの隙間も許せないとマーフィーは思っているのだった。
 
「あー、まぁ、お前らの喧嘩の原因なんて俺にはさっぱりだが……マーフィー、お前、そんなどうしようもねぇ顔するんなら、コナーの前でしてやれよ」
 
ロッコはそう言って、カウンターに突っ伏したマーフィーの頭をくしゃくしゃと撫でた。
ロッコの太い指の間をすり抜けるマーフィーの髪は、本人がそう大事にしていないわりに、とても綺麗でさわり心地が良かった。
どんな顔だよ、と小さな呻き声がしたがロッコは聞こえなかったふりをした。これ以上マーフィーの話を聞くと馬鹿をみる。
 
「マーフィー」
 
黙りこんでしまったマーフィーを横目にロッコがグラスに酒を注ぐと、まるでタイミングを見計らったかのようにコナーが現れた。
コナーは真っ直ぐにカウンターへやってきて、弟の名前を呼んだ。マーフィーは顔を上げなかった。
コナーはもう一度マーフィーの名前を呼んで、彼の髪をすいた。先程ロッコが撫でた手つきより何倍も繊細な動きにコナーの神経質なところがあらわれている。
 
「悪かった」
 
コナーが口にしたのはたった一言だけだった。けれどそれはロッコが何時間かけて慰めてやっても顔を上げないだろうマーフィーを起き上らせるだけの力を持っている。
マーフィーは顔を上げ、コナーを見上げた。兄弟の視線が絡み、ほんの少しの沈黙があって、うん、とマーフィーが頷く。
コナーはマーフィーが飲んだ酒の代金をカウンターに置くと、マーフィーの手を握って店を出て行った。じゃあな、と兄弟が手を上げたのに応えたロッコは、自分のグラスに注いだ酒を飲みほした。
カウンターに一人残されたロッコは、今回の喧嘩の原因を考えてみて、やはり阿呆らしくなって止めた。結局のところ、彼らの喧嘩なんて痴話喧嘩と大差ないのだ。
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