「なぁ、ノーム、きいてるか?」
「んー?うん、まぁ」
何度目かの問いかけにノーマンはなるべく素っ気なく聞こえるように心掛けて返事をした。
流石俳優なだけあって、ノーマンの返事はきっと誰が聞いても“素っ気ない”の一言に限る。けれどそんなノーマンの態度を気にせず、ショーンは再び他愛ない世間話を始めた。
持ってる台本が逆さですよ、ノーマンさん!
「恋を長続きさせるコツは“駆け引き”である」――そんなことを、昼間ノーマンが読んだ雑誌には書いてあった。
ショーンの恋人になって随分経つノーマンにはそのコーナーが非常に興味深く感じられ、彼は10分かけてそれを熟読した。
結果ノーマンは、「恋人に対して冷たい態度を取ることも時には重要である」という事柄を学んだわけだが、普段からショーンに甘えてばかりの彼からすればその学習内容は未知の領域だった。
しかしながらショーンとの関係を長続きさせたいノーマンは、その雑誌に従って「恋人に対して冷たい態度を取る」ことを決めた。
有言実行、思い立ったが吉日。ノーマンはすぐにショーンと会う約束を取り付け、そして今現在、ショーンに冷たい態度を取り続けている最中なのである。
「それで―――」
ショーンが話し続ける。
いつもならば彼に体を預けながら相槌を打っているノーマンだが、今はドラマの台本を読んでいるふりをしながら気のない返事を繰り返していた。
ノーマンの作戦通りなら、ショーンはもうとっくにノーマンの態度に焦れて何らかのアクションを起こしているはずなのだが、彼はノーマンの変化をまるで気にしていないようだった。
そして、目に見えた効果がないことに苛立ちを募らせたノーマンが、素っ気ないふりをするのもいい加減嫌になった時、ショーンはやっと話を区切ってにこやかに笑った。
「気のないふりはもうお終いか?ノーマン」
ショーンの一言にノーマンはひどく驚き、ぱちぱちと瞬きを繰り返した。
輝かしいほどにハンサムな笑顔を浮かべたショーンは、変わった遊びだったな、と言いながら手招きした。ノーマンは彼に従って体を寄せると、ひどく可愛らしく唇を尖らせる。
「気付いてたんなら言ってよ。僕一人馬鹿みたいじゃないか」
「なんか一生懸命だったから可愛くて。悪かったよ、ノーマン」
ノーマンから台本を取りあげてテーブルの上へ放ったショーンは、ノーマンの拗ねた唇にキスをした。
それだけでノーマンの苛つきは消え、無駄にした時間を補うようにショーンの首へ腕を回す。早くも上機嫌なノーマンの様子に、ショーンはくすくすと笑った。
唇が離れるとノーマンはすぐに、ねぇベッドに行こうよ、と囁く。断る理由など持ち合わせないショーンはノーマンの手を引いて寝室へ向かった。
「ねぇなんでわかったの?」
「……お前が可愛いから」
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