「なぁ、ロッコってどんな奴だったんだ?」
三本目のビンを空けたロミオが神妙な口ぶりで双子に訊ねた。
酒の席だからと(ロミオ以上に飲むペースの早い双子が酔っぱらっていることを期待して)思い切って訊ねたけれど、双子が揃ってロミオを見据えるので思わずたじろいでしまう。まずいことを訊いてしまったというより、ハンサムな男二人に見つめられているという事実がそうさせた。
八年前にボストンを騒がせた「セインツ」。それが双子だった。ロミオは憧れていたセインツが目の前に現れた時、歓喜と恐れで小便を漏らしそうになった。(ロシアンマフィアを20名以上も殺害した凶悪犯二人に押し倒され銃を突きつけられれば誰でもそうなる)
双子はロミオが思っているそのままの存在でありながら、想像以上に親しみやすい人間だった。双子は、兄をコナー、弟をマーフィーといった。
彼らは独特の雰囲気を持ち、世界にお互いが存在し側にいれば何の問題もないだろうと信じ切っているような依存関係を保っていた。故に二人の世界に入り込めるような人間は少なく、その世界に入る事が出来るのは、ロミオの知る限りでは彼が先に口にした「ロッコ」という男だけだった。
「ロッコは馬鹿だった」
けらけらと笑いながら答えたのは、マーフィーだった。それにコナーも頷いて笑う。そうだ、くそったれの馬鹿野郎だった、と。
双子の口調は故人を悼むものではなかった。だからといって貶しているわけでもない。いうなれば、誰かがやらかした失敗を面白おかしく喋っているような雰囲気だった。双子の中でロッコは永遠の人になったのだと、ロミオは思った。
何処にいても何をしても。双子はきっとロッコを忘れないのだ。記憶の中のロッコの思い出は色褪せることなどない。双子がいつだって互いに思い出させて、そうだったと笑い合えば。
「そうかい。良い奴だったんだろうな」
ロミオが言った。コナーとマーフィーは頷いて、それからロッコの良い所をひとつずつあげてロミオに教えた。
双子の語るロッコは本当に馬鹿だった。けれどそれ以上に、優しくて不器用で、「良い奴」だった。ロミオはロッコのことが好きになった。そして、一緒に酒を飲めないのがひどく残念だと思った。何故なら、この世の中で「セインツ」と「マクマナス兄弟」について語れる奴は彼だけだからだ。
双子がいつだって二人の世界を作ってはイチャイチャし始めることだとか。ひどい時にはキスに夢中で自分を忘れることだとか。二人の奔放さについて愚痴りたいことはロミオには沢山あった。そして、それでも彼らが好きで、「セインツ」は自分のヒーローだということも。双子には直接そんなこと恥ずかしくて言えるはずもないが、ロッコには言えるとロミオは思った。ロッコだって、セインツを愛していると確信していた。
だから。
「ロミオ、お前はロッコに似てるよ」
「そうだな。馬鹿で良い奴だ」
だからロミオは、双子のこの何気ない言葉に、ひどく感激してしまった。
双子の――この広大な世界がたった二人だけで完結してしまっている双子の世界に入り込める、唯一許された登場人物。その彼に似ている。その言葉は、つい先日叔父に頑張れと手を握られた時よりもロミオの心に響いた。
感情が高ぶるあまり、また泣きだしたロミオをマーフィーはやはり笑った。コナーも冷やかして、ロミオの頭を軽く小突く。
「ちくしょう、あんたら大好きだ」
もし自分がこの双子と一緒にいて撃ち殺されたって決して後悔しない、むしろそれは誇りになるだろうと、ロミオはひっそりと思った。それは、ロッコが双子に伝えた言葉そのものであると彼は知らなかった。
そして願わくば、ロッコと同じように聖人の胸に刻まれたいと、ロミオは涙を袖で拭った。
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