ショーンの鞄からアダルトビデオが出てきた。
ショーンだって健全な成人男性だ。ポルノを購入するのには何の問題もないし、AV男優であるノーマンもそれで生計を立てているのだから、たとえショーンが物凄くマニアックなアダルトビデオを持っていたとしても別に気にしない。
ただ、今回ショーンの鞄から出てきたアダルトビデオだけは別だった。それはノーマンが敵だと認識しているプレイ満載のビデオだったのである。
ノーマンはすぐにキッチンでディナーを作っていたショーンを呼びつけ、まるで浮気でも見つけたような勢いで、これどういうことなの、と捲し立てた。
「酷いよ!僕というものがありながらこんな…いやそりゃあ僕だからこそかもしれないけど!どうせ僕には出来ないよ!馬鹿っ!ショーンのおっぱい星人!!」
ショーンはノーマンが手に持っているアダルトビデオのパッケージを見据えて、昼間のことを思い出した。ノーマンが怒っている原因のそれは、ショーンが昼休みに同僚から押し付けられたものだった。
一体どういった経緯で話題がそちらへ向かったのかは覚えていなかったが、発端といえば、ショーンが同僚に、新しく恋人が出来たということを話したことだったように思う。
ショーンは元々グラマーな女性とばかり付き合っていたから、今度の彼女もやっぱり胸が大きいのだろうと同僚が話を振ってきた時、ショーンはノーマンの平らな胸を思い出して首を横に振った。
恋人の胸が小さいことを伝えると、ショーンの同僚はひどく同情的な目で、アダルトビデオを渡してきた。ショーンは必要ないと言ったけれど、いいからいいから、と同僚はそれを押し付けたのだった。それは、『パイズリ☆パラダイス』というタイトルだった。
「ねぇちょっと、ショーンてば聞いてる!?」
「聞いてるよ。それは会社の奴が押し付けてきたんだ。別にみたかったわけじゃない」
「でも受け取ってるってことは興味あるんじゃないの?」
「嫌いな男はあんまりいないだろうな」
「うそっ!じゃぁショーン、君、もしかして僕に不満があったの?」
ノーマンは心配そうな顔をした。ショーンは元々ノンケだったので、ノーマンと付き合う前は無論女性と付き合っていた。ノーマンの顔色が悪くなるのは当然かもしれない。
ノーマンは女性と違って柔らかな体つきではないし、挿入までに時間を要する。それらはまだ我慢できようが、天地がひっくり返りでもしない限り、パイズリだけは不可能だ。
ショーンが女性の胸が大好きで、またそれによる快楽を得たいと思っているのならば、ノーマンでは到底その欲求を満たすに足りない。
トップレベルの男優であるノーマンは、他のどんなプレイも完璧に演じることが出来るが、男優であるが故にパイズリは出来ない。だからノーマンはパイズリを目の敵にしているのだった。というか、パイズリは僕の敵だ、と豪語している。
「ねぇ、やっぱりショーンは女の子の方がいい?柔らかいおっぱいが好き?挟まれるのがいいの?僕じゃだめ?」
ねぇ、ねぇ、とノーマンは矢継早に問い質す。
早口なノーマンはとても可愛かった。ショーンにしてみれば実にくだらない心配事をしているに過ぎないノーマンはとにかく可愛かった。
女性の胸や快楽といったものがノーマンより上に位置するなんてあり得ない話だった。それはもう、ノーマンがパイズリを出来るようになるのと同じくらいの確率だ。それくらいには、ショーンはノーマンを愛している。
「不満なんてないよ。お前は可愛いし、セックスも巧い。パイズリがどうのって言って俺の気を引こうとしているところも好きだ」
「あれ、わかった?」
「当然。俺がお前のこと好きっていうのは、お前が一番知ってるんだからな」
ノーマンは悪びれた様子もなく、ショーンもまた、それを咎めなかった。
彼らからしてみれば、先程までの小芝居はちょっとした遊びのようなものだ。というより、確認作業である。
ショーンはノーマンのことを愛していたし、ノーマンはそれが疑いようもない事実だと知っていた。けれどたまに、それを何かの形で表してほしくなるのだ。
それは言うなれば恋人の我儘であって、ショーンがそれを面倒に思ったことはなかったから、ノーマンに付き合って彼の望むとおりにしてやる。
ショーンは本当に僕が好きだよね、とノーマンは笑った。どうやら満足したようだった。
「僕もショーンが好きだよ、大好き」
「知ってる」
「だけどパイズリは僕の敵だ。今度同じようなアダルトビデオ見つけたら容赦しないからね」
甘噛みでなくほんのちょっぴり本気を滲ませてノーマンはショーンの鼻に噛みついた。
それから二人は、ショーンが押し付けられたアダルトビデオよりもずっと濃厚な夜を過ごした。現役AV男優は伊達ではないのだ!(ただしパイズリはできない)
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